試写会に行ったの話
「phantom thread (ファントムスレッド)」の試写会に行ってきた。アカデミー賞の衣装賞?を受賞、その他いくつかの部門にノミネートしているらしい。
感想はとにかく服と音楽がきれいだった。 上映時間は130分だったが、飽きずに最後まで観られた。思い出しても、やはり音楽がよかった。
phantom threadは、オートクチュールのドレス製作者を中心に据えて、美しい女性がたくさん登場しつつ進行していく。ネタバレになりそうなので、あまり書かないでおこうと思うが、個人的には主人公のお姉さん役の人がとてもよかった。黒のスーツ?ドレス?がとても似合っていた。ああいう歳の取り方をしたいと思える演技だった。強い女性は美しい。わたしも強く美しくありたい。
鑑賞前はブラックスワンのような内容を想像していたが、また少し趣の違ったこわさのある作品だった。芸術や恋愛で狂気じみているという点ではかなり似ていると思う。
整っていることは正義、秩序だった生活も正義、その正義もまた個々人のみに当てはまるもので、他人にとっては悪か枷か、まあそんなところだろう。いつの世も押し付けられる側が割を食う。
上映後に精神科医と作家のトークショーがあった。精神科医の共同幻想と対幻想ということばが懐かしくて、少し嬉しくなった。話は逸れるが、世の中の人たちは共同幻想の中で生きているのである。常識も貨幣価値もモラル、ルール、マナー、そういうもの全てが共同幻想なのだと思うと気持ちが楽になる。我々は幻想の中で不可逆な現実を刻んでいるのだ。
願わくばわたしの病気や投薬も幻想のであってほしい。抗不安剤と再燃の亡霊に取り憑かれて生きていくのは御免である。
愛ゆえに毒を盛る。うーん、江戸時代の心中物なんかにしたらかなり売れたんじゃないだろうか。「愛ゆえに」という行動をここのところまったくしていない。相手がいないのだからしようにもできない。わたしがしているのはせいぜい高齢者や社会的弱者への慈悲か憐憫からの行動のみである。底の浅さが知れてしまう。
愛だの恋だの遠ざかって久しいものになってしまった。
ぐるぐるかざぐるま。
あぐれ