お酒をあまり飲まないの話
呑兵衛がきらいである。父親がアル中だったからかもしれない。
わたしはたぶんお酒自体を飲める方でも飲めない方でもないと思う。一口で顔が真っ赤になることはないけど、何杯か飲めば酔う。上を見ればきりがないが、人並みくらいというところだろう。
大人になったら、正確には社会人になったら帰宅して冷蔵庫を開けて、缶ビールか缶チューハイを飲んで「つかれた~」と言いながらテレビをつける…そんな生活になると思っていた。不思議なことにならなかった。
自分でも社会人になったら、自分は酒を飲む人間だろうなあと漠然と思っていた。友人からも「ひとりでいるとき飲まない姿が想像できない」と言われる。そんなにやさぐれているように見えるのか。クリーンなメンヘラを標榜している、兎にも角にも飲まないのである。
理由はいくつかある。
なんとなく父親を連想させるから。
単純に痩せづらくなるから。
服用している薬の副作用が強くなるから。
睡眠が浅くなるから。
飲む必要性を感じないから。
まあこんなところだと思う。
最後の理由がいちばん大きいかもしれない。必要がないことはしなくてもいいと思う。毎日飲んだら、毎日ポストか冷蔵庫にお金が入っているなら別だ、毎日飲む。そうじゃないので飲まなくてもいいか、となる。
お酒を飲みたくなるときはないのか、
うーん、これが微妙なところで
「飲まないとやってられない!」
となったことがない。人生は酒など飲まなくてもやっていけるのである。現に成人するまで善良な方々は飲まずにやってきたはずだ。
社会人になって環境が変わった?そんな会社は辞めてしまえ。
キレートレモンかレモネードと同じくらいの楽しさで飲めなくなったらそれはただの依存である。アル中になっているか、これからなるか、それだけの話だ。安酒買いをまずやめればいい。やめられる人はアル中にならない、かなしい現実だ。
とは言うものの、薬がないとやっていけない、これは困った。
薬なしでもやっていきたい。完全にジャンキーである。酒を飲まない煙草も吸わない、健全極まるジャンキーが誕生した。実際のところは脳みそに疾患あり、飲酒でこれ以上脳が萎縮しないように怯える日々を送っている。話を盛りすぎた。
きれいに飲めない人がきらいである。
飲むたびに吐くような人は最悪だ。飲んで吐いていいのはDJ社長とホストとキャバ嬢だ。飲むのが仕事の人たちは吐くのもやむを得ない。飲んで死なれても周りの人たちに迷惑がかかる。胃と食道を荒らさない程度に元気に飲み、元気にリバースしてほしい。
「俺は飲める!」
くらいの威勢で飲むやつらがきらいである。そこらじゅうにいる大学生や新入社員の若い飲み会のノリがすきじゃない。
飲めるとそんなにえらいのか、えらくはない。飲めると言うなら吐くなという話だ。酒の一滴、血の一滴。そんなに飲めるというのならアルコールを静脈注射すればいい。どうなるのかわたしが知ったこっちゃない。
こう考えていくと、きれいに飲めない人がきらいなだけでお酒はきらいじゃないのかもしれない。
きらいじゃないから飲むのかというと、それもまた違う。なんとも難しいところである。
あとは飲み会で饒舌になったやつらがその場の席の雰囲気で仲良くなったと勘違いしていることもきらいである。酒の力を借りるな、男も女もしらふで話せ。しらふで話せない人たちとは友人になりたくない。なんとなく会うのも面倒だ。第一、毎回金もかかる。飲むならその分おいしいごはんが食べたい。飲み屋で3万使うのはあっという間だ。3万純粋にごはんを食べるのはそこそこに高級なところに行かないといけない。同じ3万円のはずなのに不思議である。
酒があって仲良くなった、わからなくもない。酒がないと仲良くなれなかった、わたしは仲良くなれなくていい。
これだけうだうだ書いているが、別に飲む人たちのことは否定しないし、居酒屋で仲良くなって一生の友人になる人や仕事に繋がる云々の話も否定するつもりはない。飲んでも酔わなければいいのに。人が変わるからお酒はきらいだ。
つまるところは飲みたければ勝手に飲め。
基本的にはこれに尽きる。
ただ、わたしはミーハーなので年に1回くらいはビアガーデンに行きたいし、面白そうな居酒屋があれば流行りが終わった頃に行ってみたりもする。ピークラウンジのフリーフローはよかった。そこそこに飲んだ。ああいうところでそこそこに飲んでも許されるのは20代のうちだけな気がする。もう1回くらい行っておきたい。
お酒をあまり飲まなくて困っていることがふたつある。
引越したての頃に梅酒を仕込んだ。それも何を思ったかおよそ20リットル仕込んだ。
わたしは自分の部屋に他人を呼ばない。合鍵は兄弟と信頼のおける友人に渡してある。万一、恋人ができても、勝手に上がり込んで自宅の酒を飲まれていたということは起こりえない。
つまり、全く梅酒が減らないのである。一昨年、梅の実は引き上げた。それなりに飲み頃だろう。飲む気がないのでずっと瓶に布をかけて直射日光が当たらないようにしてある。
引越すまでにはどうにかしたい。
もうひとつは、お酒の中でも貴腐ワインがすきなのだが、調子に乗ってドイツから個人輸入していた分が全く減らない。ドイツに行ったときにおいしかったので、試飲させてくれたショップをネットで探してそこから買っている。
国内で買うと鬼のように高い。国内で飲んだら鬼も青くなるほど高い。
ゆえに個人輸入した。そして飲まない。
わかりきっていたことである。3回目の個人輸入のときに送料の関係で飲みもしないロゼも買った。完全に馬鹿である。
とはいえ、何本かは友人や知人に押し付けて捌けた。たぶん残りは5本くらいだと思う。先は長い。
これだけ減らない減らないと言う割に貴腐ワインはドイツのトロッケンべーレンアウスレーゼという舌がもつれそうな規格のワインがいちばんだと思っている。我が家にあるのは全部それだ。お世辞抜きでめちゃくちゃにおいしい。そしてめちゃくちゃに甘い。
キレートレモンにどれだけ砂糖を足したらあんなに甘くなるのかというほど甘い。わかりきっていたことであるが、甘いがゆえに飲んだらすぐ満足する。やはり減らない。
もう我が家の梅酒とワインは一生減らないのだと思う。
でも、誰も家には来てほしくない。
わがままである。
風呂にでも入れるか、べたついて死にそうだ。
そんなこんなでレモネードかキレートレモンを飲みましょう。
追記
今日、カルディに行って思い出した。
リモンチェッロをクランベリージュースで割ってカットレモンを入れてたまに飲んでいた。
学生のときはアマレットを買ってジンジャーエールで割ってカットレモンを入れて飲んでいた。
ただ、どっちも飲み切れなくて途中で友人にあげてしまった。
アマレットジンジャーはおいしい。そもそもジンジャーエールがおいしいから、おいしい。ウィルキンソンのからいジンジャーエールが飲みたくなってきた。
わたしの飲用ではないが、自宅には製菓用のダークラムがある。ちまちま減っている。
みりんもちまちま減っている。
減りづらいのは体重も家のお酒も同じである。くだらないことを書いている内に4月が終わってしまう。
お酒の力を借りればもう少し人生は楽になるだろうか。
ヘンゼルとGLAY TERU。
あぐれ