おさんぽの話
今くらいの季節が外で歩くにはちょうどいい。
春はあけぼの、夏は夜、さんぽはいつでも楽しいが、春秋の気温が昼でも苦じゃなく歩けてよい。
夏のさんぽは早朝がいちばん。夜でもまだ昼の暑さが残っている。昼に歩いたら熱中症で死んでしまう。日本の夏はこわいのだ。
秋のさんぽはいつだっていい。虫が少なくなってきていい。紅葉も楽しい。
冬のさんぽもいつだっていい。日の出前は凍りそうに寒くて最高だし、昼はちょっと暖かくてよい。何より虫が全くいなくてよい。
さんぽといえば、かの有名な谷根千に行ってみたい。まだ一度も行ったことがない気がする。気がするだけでもしかしたら知らないうちに行っているのかもしれない。根津神社の御朱印がほしい。ひみつ堂に並ばず入りたい。猫にはそこまで興味がない。
でも、よくよく考えるとおさんぽスポンジなんて言われるところにはきっと付き合いたての新芽みたいでてんぷらにしたらおいしそうなカップルと、付き合いが長く鍋でくたくたになった白菜みたいなカップルがたくさんいるんだろう。そんなところに飛び込んだら、息苦しくて窒息死するか、常に奇異の目を向けられて針のむしろというやつだろう。
さんぽはなんでもないところを歩くのが一番なのかもしれない。この前も近所の知らない道をてれんこてれんこ歩いていたら、ちょうど保育園帰りの子どもとお迎えの親がペアで歩いていて
「今日は楽しいことあった?」
「そんなのないよ!」
と元気に返事しているのを聞いてしまった。楽しいことなんてなくたって、楽しく生きていけるのだと子どもに教えてもらった気持ちになった。それでも、わたしも人生は概ね楽しいことで埋め尽くされている。
明日からGWの人たちが多い。去年は人並みに大きな公園に出掛けたり、旅行をしたりしていたが、今年は自宅でのんびりするか、ジムに通ってゆるく汗を流すことにする。
外に出て歩けるというのは心身ともに健康な証である。
おなかがすいたら、ねるねるねるね。
あぐれ