音楽の話
音楽に疎い。絶望的なほどに疎い。
先に断っておく、これは金魚を再び外に追い出す前の話である。
つい最近までワンオクロックとリンキンパークの違いがわからなかった。ファンが聞いたら火炎瓶でも投げ込まれても文句は言えない。
とはいうものの、疎いだけで嫌いなわけではない。学生の頃はCDを押し付けられればそれなりに聴いたし、好きかもよくわからなくてもなんとなくCDを買ってみたこともあった。
基本的にジャンルは問わずに何でも聴く。クラッシックからレゲエ、J-POPなんでも来いという心構えである。単純に知識がないだけである。ああ、でも流行りのアイドルが歌う曲は少し苦手かもしれない。それも、3年も待てば聴き馴染む。AKBあたりがそうだったので、乃木坂？欅坂？あたりも似たようなものだろう。そろそろファンに殺されかねないので自重する。
ちなみに言うと今はショパンの曲が流れている。文化人ぶっているわけではない。
ショパンの夜想曲第20番嬰ハ短調がすきなのである。確か中学か高校の時からすきだ。戦場のピアニストという映画がすきでこの曲がすきになった。
繰り返し観る映画は戦場のピアニストと攻殻機動隊くらいである。
話が逸れた。今はｉTunesに入っている曲が勝手に再生されているが、千代田区の図書館でショパン関連のCDを片っ端から借りてPCに突っ込んだのである。流れでフジコヘミングのCDも何枚か借りた。これはもはやわたしの定型文であるが、正直違いはわからない。まあ、全員上手なのだろうということはわかる、熱狂的なファンではないのでそれくらいでちょうどいい。
細かいことを気にし始めると楽しいものが楽しくなくなるのはままあることである。極めたい人たちは存分に極めればいいし、仕事にしている人たちもそれなりの質も保てるように勝手に努力すればいいと思う。趣味で気にしたい人もそうすればいい。わたしは自分の専門外のことにいちいち目くじらを立てて喚きたてるほど、好戦的ではない。
ショパンは金魚と一緒に聴くといい。F分の１ゆらぎというやつで、金魚がリラックスする。
クラシックといえばサンサーンスもすきである。有名どころはいろいろあるが、死の舞踏か水族館あたりを推したい。いずれも金魚と聴くのにちょうどいい曲だと思う。
金魚に聴覚はあるのか、という議論についてだが、大方の魚には体の側面に水の振動を感じ取る細胞があるらしいので、まあ自分に都合のいい音と警戒すべき音くらいはわかるのではないか、というところがわたしの主張である。ただ、空気を伝わる振動が水中でどのように変換されているのかはわからない。金魚のみぞ知るである。
しかしながら、めだかでさえ学校に行くというのだから、金魚にだって最低限の音楽の素養はあるはずである。ショパンとサンサーンスがわからなくたって、滝廉太郎と小林秀雄くらいは知っているだろう。我が家の金魚は愛知県は弥富出身の実質名古屋嬢である。それくらい知っておいてもらわないと、銀座という名を大井町くらいに変更せねばならない。
音楽の話に戻る。
わたしはこう見えてサックスが吹ける。単音の楽器は楽である。また、ト音記号も楽である。何が吹けるのか、聞かれると困るが、シンプソンズのオープニングくらいは吹けた。うまいか下手か、おそらく下手だ。今では運指もままならないかもしれない。自前のサックスは知人の内定祝いにあげてしまった。ヤナギサワのかわいいアルトサックスであった。いつも気が向けばぴかぴかに磨いていた。ぴかぴかのサックスはいい。
他にできる楽器はない。ないので、歌うことがすきである。うまいか下手か、これもおそらくは下手だろう。かなしいことにわたしには絶望的に音楽のセンスがない。圧倒的に聴者なのだろう。それでもカラオケはたのしい。唯一残念な点を挙げるとするならば、カラオケボックスに金魚を同伴させづらいということくらいだろう。
鳥の血に悲しめど、
魚の血に悲しまず。
聲あるものは幸いなり。
我が家の金魚だったら少しくらい歌っても許される。死んだときいろんな人に泣いてもらえるように声を出して存在を主張した方がいい。
かといって、それをしないできないところが金魚のかわいさである。所詮我々はヒトと魚、水で隔てられ、共に生きることは叶わない。金魚に合わせればわたしが溺死するし、金魚が合わせればたちまちに干からびてしまう。声すら通わぬ我々ができることは、それぞれの住処で共に同じ音楽を聴くことくらいである。
なんという強引なこじつけか、開き直って書いてしまえばどうとでもなる。我ながらあっぱれの姿勢だ。
さて、そうこうしているうちに死の舞踏が始まった。何度聴いても最初のハープの音がよく聴こえないのである。そのうち生演奏で聴いてみたいクラシックのひとつだ。
無職のうちに何かしら行ってみようと思う。
喉が痛くなったらレモネード。
やさぐれの喉。
あぐれ
